一括下請負について
<一括下請負について>
建設業者は、その請け負った建設工事を、いかなる方法をもってするを問わず、一括して他人に請け負わせてはならず、建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負った建設工事を一括して請け負ってはなりません。これが「一括下請負の禁止」といわれるものです。
建設業者は、その請け負った建設工事の完成について誠実に履行することが必要であり、次のような場合は、元請負人がその下請工事の施工に実質的に関与していると認められるときを除き、一括下請負に該当するとされています。
- ①請け負った建設工事の全部またはその主たる部分を一括して他の業者に請け負わせる場合
- ②請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の工事を一括して他の業者に請け負わせる場合
建設工事1件の範囲は、原則として請負契約単位で判断されます。
①の場合の典型的な例としては、請け負った一切の工事を他の1業者に施工させる場合のほか、本体工事の全てを1業者に下請負させ、附帯工事のみを自らまたは他の下請負人が施工する場合や、本体工事の大部分を1業者に下請負させ、本体工事のうち主要でない一部分を自らまたは他の下請負人が施工する場合などがあります。
②の場合の例としては、戸建て住宅10戸の新築工事を請け負い、そのうち1戸の工事を1社に下請負させる場合や、道路改修工事4kmを請け負い、そのうち1km分について施工技術上分割しなければならない特段の理由がないにもかかわらず、その工事を1社に下請負させる場合などがあります。
このように、一括下請負が禁止されるのは、次のような理由からです。
- ①発注者が建設工事の請負契約を締結するに際して建設業者に寄せた信頼を裏切ることとなる。
- →発注者は、建設業者の過去の施工実績、施工能力、社会的信用など、様々な評価をした上で、当該建設業者を信頼して契約している。
- ②一括下請負を容認すると、中間搾取、工事の室の低下、労働条件の悪化、実際の工事施工の責任の不明確化等が発生するとともに、施工能力のない商業ブローカー的な不良建設業者の輩出を招くことにもなりかねず、建設業の健全な発達を阻害するおそれがある。
ポイント
- ・一括して他人に請け負わせてはいけません。
- ・一括して他人から請け負ってはいけません。
- ・下請間でも一括下請負は禁止されています。
※一括下請負は、下請工事の元請負人だけでなく、下請負人も監督処分(営業停止)の対象になります。
<「実質的に関与」とは>
元請業者がその工事の実施に「実質的に関与」していれば、一括下請負にはなりません。「実質的に関与」とは、元請負人が自ら総合的に企画、調整及び指導を行うことをいいます。
具体的には、施工計画の総合的な企画、工事全体の的確な施工を確保するための工程管理及び安全管理、工事目的物、工事仮設物、工事用資材等の品質管理、下請負人間の施工の調整、下請負人に対する技術指導、監督等がこれに当たります。
単に現場に技術者を置いているだけではこれに該当せず、また、現場に元請負人との間に直接的かつ恒常的な雇用関係を有する適格な技術者が置かれていない場合には、「実質的に関与」しているとはいえないことになりますので注意が必要です。
発注者から直接建設工事を請け負った元請負人の場合について具体的に説明すると、元請負人が配置した主任技術者または監理技術者が、
- ①発注者との協議
- ②住民への説明
- ③官公庁等への届出等
- ④近隣工事との調整
- ⑤施工計画の作成
- ⑥工程管理
- ⑦出来型・品質管理
- ⑧完成検査
- ⑨安全管理
- ⑩下請業者の施工調整・指導監督
その際、当該技術者が、過去に同種または類似の工事での施工管理を行った経験の有無も判断の際の参考になるでしょうし、また、業務量に応じてその他の必要な技術者を配置していることが求められます。
(下請工事への実質的な関与が認められるためには)
■自社の技術者が下請工事の
- ①施工計画の作成
- ②工程管理
- ③出来型・品質管理
- ④完成検査
- ⑤安全管理
- ⑥下請業者への指導監督
■発注者から工事を直接請け負った者については、加えて、
- ⑦発注者との協議
- ⑧住民への説明
- ⑨官公庁等への届出等
- ⑩近隣工事との調整
■一括下請負の禁止が適用されない場合
■一括下請負の禁止が適用される契約当事者
※「一括下請負の禁止」に関して、参考情報として本サイトに掲載しておりますが個別のご相談には対応しておりません。予めご了承下さい。
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